れおなのブログ~学生さん達へ②
先日の『学生さん達へ①』の続きです。今回は、少し真面目な、そして核心をついたような質問が多いです。ひとつひとつ、お答えさせていただきます。
Q. なぜ医療トラブルとも言える出産だったのに、病院側を訴えなかったのか。
A. 奈央斗くんは、出産時のトラブルで脳に障がいをおった、と、お伝えしました。具体的には、「臍帯脱出」という事態で、そこから緊急帝王切開までに時間がかかり、仮死状態がやや長かったのです。夜間でドクター不在(オンコールで駆けつけるシステム)だったという病院側を、訴えるのか、どうか。むずかしい判断ですし、実際、私の家族も、私に聞こえぬよう、いくらか相談していたようです。
ただ私は、当時も今も、全くその気はありませんでした。なぜでしょう?
こう、思ったからです。
「誰かを責めている時間やエネルギーがあったら、その同じ時間を、ただ一生懸命に生きようとしている我が子の応援に、あてた方がいい。すっごくたくさんの愛を、彼に注いでいた方がいい。世界は、生きる価値がある、あなたが今苦しんでいる世界は、でもきっときっと、美しいものがいっぱいある、だからガンバれ、って伝える時間に、あてた方が、いい。」(実際、新生児なおぽんの耳元に、私がいない時にかけてください、って、ルイアームストロングの”What a Wonderful World”の音源をおいていったり(笑)、してました。)
ただ、それだけです。だって、目の前で、周囲の大人達の真意にかまわず、何度も何度も、発作や呼吸困難になりながら、この世に復活してくる子供が、いるわけですから。これは、明らかな「彼の意思」だと思ったのです。“絶対に自分は生きてやる”、っていう意思です。全力で応援するっきゃ、ないでしょ?どんなに暗いことを周りから言われても、「ちょっとちょっと待って、今はそんなのどうでもいい、彼はいま、頑張っているから、生きようと、してるから!!」って、なるでしょ?
私自身、体力も精神力も、相当に限界に近い状態だったからこそ、数少ない自分のエネルギーをどこに使えば良いのか、とてもクリアに見通せたのだと思います。
そして最近は、こうも思います。誰かや何かを責めたり恨んだりしている時、実は、自分自身をも同じくらいに傷つけているのかなぁ?と。だって、心がモヤァ〜〜って、うす黒く、感じませんか?そういう時。逆に、誰かを応援したり、喜ばせた時って、自分も、ウキウキっと嬉しくなりませんか?この体で生きる、たった一度きりの人生です。“嬉しい時たくさん”で過ごしたいのか、“うす黒い気持ちたくさん”で過ごしたいのか・・、きっと、自分たち自身で決めることが、できるのじゃないかなぁ?って、思います。
Q. 障がい児を持った時、自分なら、家族に受け入れてもらえるか不安になったり、情緒不安定にもなるはず。その時の支えとなったのは誰ですか?
A. 障がい児当人(奈央斗くん)です。
もちろん私、有難いことに家族や友人に恵まれていて、彼らのたっくさんのサポートがあったことは、絶対にお伝えしなくてはなりません。母も、姉も、夫も、友も、皆が全力で私を支えてくれました。絶えず気遣い、なおぽんの兄の面倒もみてくれました。でも、やはり、ぽんっと一番に頭に浮かぶのは、NICUの小さなベッドで、必死に生きぬく彼自身の姿以外に、ないのです。(ひとつ前のご質問への回答も、合わせて読んでいただければ、幸いです。)だから私も、彼の側で毎日を、必死に生きぬくしか、ないのです。
それでも、だけど、どうしても・・不安や情緒不安定や生理前症候群(笑)とはおさらばできないものです。実は今も、日々、いろんな事で気持ちのアップダウンとはお付き合いしています(そこまで、メンタル強靭じゃぁないのですよ♫)。だからエラそうなことは一つも言えないし、特定の誰かがいつも支えてくれているわけでも、ないのです。
ただ、これだけは、だいぶん正しいかなぁ?と思うことが、一つだけあります。
どうぞ余談程度に、お聞きくださいね。
それは、不思議ですけれど、「ご縁」です。
ある時は、看護師さん、ある時は、久しぶりに会った友人、ある時は、お隣のおばちゃん、ある時は、ヘルパーさん、ある時は、通りすがりの犬・・・・もう数え切れない。我が子のマネをして、ただもう一生懸命に、真面目に、必死になって生きていたら、必ず、その時その時の自分に必要な出会いがやってくるのです。「人」との出会いだけに、限りません。本。動物。景色。テレビ。ふと涙がおちて、あぁ、これでまた、生きていける、とか、あ、そっか・・、の、繰り返しで、今日、ここまできました。
だから、こうなってくるともう、テーマが障がい児をもつことだけじゃぁ、ないようです。何かの壁にぶつかったら、ぜひ、悩み、迷いながら、でもとりあえず、ふて腐れたり投げやりになることなく、一生懸命に生きてみること。すでに一生懸命生きておられる皆様には、ちょっと差し出がましいようですが、私からのおススメ、です。
Q. お父さんは働きながら、何ができますか?また、何をして欲しいですか?
A. これまた、お父さんの仕事の種類や、家族の形(兄弟、おじいちゃんおばあちゃんとの同居、夫婦の関係性・・など、など)によって、状況も、母からのニーズも、大きく違ってくるところかと思います。
我が家は、核家族(父、母、子供のみ)です。
私は、なおぽんが在宅生活になってすぐ、「お父さんの手を借りてはいけないよ。男は、働いて、お金を稼いでもらわないと。なるべく、父親に負担をかけずに、しておやりなさいよ」と、遠方に住む身内からアドバイスをもらいました。しばらくは、そうだよな・・、と思い、夜間も含めてなるべく、ほぼ一人で抱えておりましたが、さすがに、これでは体が持たない、という経験を経て、今は少し、違う考えになりました。
以下は、私が思う、「お父さんに、できること」です。
① 話を聞くことができる
② 本当は、なんでもできる
これ①は、ご想像つきやすいかと思います。よく、うまくいく結婚の秘訣、なんかにも言われてます(笑)!奥さんのお話を、とにかく、ひたすら聞いてください、ってやつです。その通りだと思います。くれぐれも、『結論』や『答え』は、はいらないコトが多いので、ご注意です(・・でも突然、手術のことや、薬について、重要な決断を求められることも・・つくづく、難しい注文ですよねぇ、世の中のお父さん!)。
でも特に、障がい児(病児やご高齢者介護なども同じかなぁ?)の医療ケアに追われる母親は、心の吐き出し場所が少なくなりがち。公園デビューもできない、ふつーに保育所や幼稚園にも通えない。つまり、似たようなママ友に、あまり出会わない(出会えない)。
学校に入ったり、本人の状態が落ち着けば、話はちょっと変わってきますが、それまでは、病児や障がい児を受け入れてくれる通所施設(保育園のようなもの)に通えるケースならまだ良い方で、通うコトすら難しい場合だってあるのです。今、この瞬間にも、閉ざされた家庭の中だけで生きているお母さん達が、日本中にいるということを、知ってほしいと思います。
そんな母親にとって、父親だけが、外(社会)の風を運んでくる、唯一の接点です。少し重たいようですが、こんな時期を、きちんと話し合い、お互いの心を見つめて過ごせるかどうか・・で、先々の意識のズレを最小のものにできる(できた)のではないかな?なんて、我が家の反省も含めて(!!笑)、書いています。
そして②ですが・・。
究極の事態になれば、誰でもおそらく、気がつくのではないかなぁ?単身で子育てをしているお父さんやお母さんを、想像してみてください。男だから、女だから、そんなことを言っていられない。なんだって、すべて、やらざるを得ないのです。
医療ケア、重度障がいを持つ子の子育てというのは、その生活に慣れるまでは、究極の事態に近い、と、思います(それに私がもしも、急に倒れたら、どうなるでしょう?)。普通の社会のルール(男は山へシバ刈りに、女は川で洗濯・・のような)から、どうぞ、お父さんも堂々と外れて、「僕は、なにをすればいいかな?」と聞いてほしいものです。昨今ではだいぶん市民権を得てきましたが、パパによるご飯作りも、お洗濯も、オムツ替えも。逆に、ママが働くのだって、諦めないでほしいなぁ・・。
両者がそれぞれに、得意なコトを持ちより、不得意なコトを補い合って、ともに子育てをするのは、決して不可能ではないはずです。そして、我が家のように、もしも、今の日本ではまだ「一般的」で「常識的」ではない、仕事も家事も育児も医ケアの子供のケアも、全てを母と一緒に分担しうる父親がいたのなら、それを「すごいねぇ〜」「お父さん、立派だねぇ〜」と、褒めまくる社会こそが、おかしいと思っていただきたいのです(あ、でも本人には、やっぱり感謝しなくてはいけないのですけど。書きながら、やっぱり、うちの旦那さんはすごいような、気がしてきました。・・やばい!普段、あまり感謝を伝えていない・・・またまた反省)。
だって、その人だけを、特別なものにしてしまったら、いつまでたっても、それが、社会の当たり前、にはならないからです。
また、すっかり長くなりました。そしてまた、すっかり、自分の思いのたけを、ぶちまけちゃった・・。くれぐれも、一人の障がい児のひとりの母の意見です。たくさん、たくさん、当事者の数だけ、意見や思いがある。どうぞ、なるべくたくさんの方から、その思いを拾ってくださることを願っています。
次回、一番多かった質問、「なおぽんのお兄ちゃんに関すること」、などをお答えさせていただきます。
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